○徳島県環境基本条例

平成十一年三月二十五日

徳島県条例第十一号

徳島県環境基本条例をここに公布する。

徳島県環境基本条例

目次

前文

第一章 総則(第一条―第八条)

第二章 環境の保全及び創造に関する基本的施策

第一節 施策の策定等に係る指針(第九条)

第二節 環境基本計画(第十条)

第三節 環境の保全及び創造のための施策等(第十一条―第二十六条)

第四節 地球環境の保全及び国際協力(第二十七条・第二十八条)

第五節 推進体制等の整備等(第二十九条―第三十一条)

附則

私たちは、鳴門海峡から太平洋までの海岸線、剣山及び吉野川をはじめとする豊かな自然の下に、特色ある文化、伝統及び産業をはぐくんできた。

徳島県では、これまで、産業活動に伴う大気の汚染及び水質の汚濁、乱開発による自然破壊等の環境問題について、各種の環境の保全のための対策が進められてきている。

しかしながら、近年の大量生産、大量消費及び大量廃棄を基調とする社会経済活動は、私たちの生活に利便性及び物質的な豊かさをもたらす一方で、廃棄物の量の増大等の都市型及び生活型の環境問題の進行並びに多種多様な化学物質による環境問題の発生をもたらし、さらには、地球全体の温暖化等の地球規模の環境問題を引き起こし、人類の存続の基盤である地球の環境までが損なわれるおそれを生じさせている。

もとより、私たちは、健康で文化的な生活を営む上で健全で恵み豊かな環境の恵沢を享受する権利を有するとともに、その環境を将来の世代に継承する責務を有している。

このため、清浄な水及び大気、良好な自然環境、潤いと安らぎのある環境等が維持され、かつ、環境への負荷の少ない循環を基調とした社会経済活動が着実に行われている活力ある社会を構築し、人と自然とが共生する住みやすい徳島を実現することに向け、私たちすべてが、共通の認識の下に、相互に協力しながら、事業活動及び日常生活において自主的かつ積極的に取り組むとともに、このような取組を通じて地球環境の保全に貢献する必要がある。

ここに、私たちは、健全で恵み豊かな環境を保全し、より良い環境を創造するとともに、将来の世代に継承していくことを決意し、この条例を制定する。

第一章 総則

(目的)

第一条 この条例は、環境の保全及び創造について、基本理念を定め、並びに県、市町村、事業者及び県民の責務を明らかにするとともに、環境の保全及び創造に関する施策の基本となる事項を定めることにより、環境の保全及び創造に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び将来の県民の健康で文化的な生活の確保に寄与するとともに人類の福祉に貢献することを目的とする。

(定義)

第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

 環境への負荷 人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいう。

 地球環境の保全 人の活動による地球全体の温暖化又はオゾン層の破壊の進行、酸性雨の発生、海洋の汚染、野生生物の種の減少その他の地球の全体又はその広範な部分の環境に影響を及ぼす事態に係る環境の保全であって、人類の福祉に貢献するとともに県民の健康で文化的な生活の確保に寄与するものをいう。

 公害 環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁(水質以外の水の状態又は水底の底質が悪化することを含む。)、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下(鉱物の掘採のための土地の掘削によるものを除く。)及び悪臭によって、人の健康又は生活環境(人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含む。以下同じ。)に係る被害が生ずることをいう。

(基本理念)

第三条 環境の保全及び創造は、健全で恵み豊かな環境が県民の健康で文化的な生活に欠くことのできないものであることにかんがみ、現在及び将来の県民がこの恵沢を享受するとともに人と自然との共生が将来にわたって確保されるように適切に行われなければならない。

2 環境の保全及び創造は、すべての者の参加及び相互の協力の下に、環境への負荷の少ない循環を基調とした社会経済活動が行われるようになることによって、経済の発展との統合を図りながら持続的に発展することができる社会が構築されることを旨として、行わなければならない。

3 地球環境の保全は、地域の環境が地球の環境と深くかかわっていることにかんがみ、すべての者の事業活動及び日常生活における自主的な取組により積極的に推進されるとともに、国際協力の下に推進されなければならない。

(県の責務)

第四条 県は、前条に定める環境の保全及び創造についての基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、環境の保全及び創造に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。

2 県は、市町村が行う環境の保全及び創造に関する施策を支援するように努めるものとする。

(市町村の責務)

第五条 市町村は、基本理念にのっとり、環境の保全及び創造に関し、その区域の自然的社会的条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

2 市町村は、前項の施策を策定し、及び実施するに当たっては、県及び他の市町村と連携を図るように努めるものとする。

(事業者の責務)

第六条 事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たっては、これに伴って生ずる公害を防止し、又は自然環境を適正に保全するために必要な措置を講ずる責務を有する。

2 事業者は、基本理念にのっとり、環境の保全上の支障を防止するため、物の製造、加工又は販売その他の事業活動を行うに当たって、その事業活動に係る製品その他の物が廃棄物となった場合にその適正な処理が図られることとなるように必要な措置を講ずる責務を有する。

3 前二項に定めるもののほか、事業者は、基本理念にのっとり、環境の保全上の支障を防止するため、物の製造、加工又は販売その他の事業活動を行うに当たって、その事業活動に係る製品その他の物が使用され又は廃棄されることによる環境への負荷の低減に資するように努めるとともに、その事業活動において、再生資源その他の環境への負荷の低減に資する原材料、役務等を利用するように努めなければならない。

4 前三項に定めるもののほか、事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動に関し、これに伴う環境への負荷の低減その他環境の保全及び創造に自ら努めるとともに、県又は市町村が実施する環境の保全及び創造に関する施策に協力するように努めなければならない。

(県民の責務)

第七条 県民は、基本理念にのっとり、環境の保全上の支障を防止するため、その日常生活に伴う環境への負荷の低減に努めなければならない。

2 前項に定めるもののほか、県民は、基本理念にのっとり、環境の保全及び創造に自ら努めるとともに、県又は市町村が実施する環境の保全及び創造に関する施策に協力するように努めなければならない。

(環境の状況等の公表)

第八条 知事は、毎年、環境の状況並びに環境の保全及び創造に関して講じた施策の状況を明らかにした報告書を作成し、これを公表しなければならない。

第二章 環境の保全及び創造に関する基本的施策

第一節 施策の策定等に係る指針

第九条 県は、環境の保全及び創造に関する施策を策定し、及び実施するに当たっては、基本理念にのっとり、次に掲げる事項の確保を旨として、各種の施策相互の有機的な連携を図りつつ総合的かつ計画的に行うものとする。

 人の健康が保護され、及び生活環境が保全され、並びに自然環境が適正に保全されるよう、大気、水、土壌その他の環境の自然的構成要素が良好な状態に保持されること。

 生態系の多様性の確保、野生生物の種の保存その他の生物の多様性の確保が図られるとともに、森林、農地、水辺地等における多様な自然環境が地域の自然的社会的条件に応じて体系的に保全されること。

 人と自然との豊かな触れ合いが保たれるとともに、潤いと安らぎのある環境が保全され、及び創造されること。

第二節 環境基本計画

第十条 知事は、環境の保全及び創造に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、環境の保全及び創造に関する基本的な計画(以下「環境基本計画」という。)を定めなければならない。

2 環境基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

 環境の保全及び創造に関する長期的な目標及び施策の大綱

 前号に掲げるもののほか、環境の保全及び創造に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項

3 知事は、環境基本計画を定めようとするときは、あらかじめ、徳島県環境審議会の意見を聴かなければならない。

4 知事は、環境基本計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

5 知事は、経済事情の変化、環境の状況の変化等により必要があると認めるときは、環境基本計画を変更するものとする。

6 第三項及び第四項の規定は、環境基本計画の変更について準用する。

第三節 環境の保全及び創造のための施策等

(施策の策定等に当たっての配慮)

第十一条 県は、環境に影響を及ぼすと認められる施策を策定し、及び実施するに当たっては、環境基本計画との整合を図ること等により環境の保全及び創造に配慮しなければならない。

(環境影響評価の推進)

第十二条 県は、土地の形状の変更、工作物の新設その他これらに類する事業を行う事業者が、その事業の実施に当たりあらかじめその事業に係る環境への影響について自ら適正に調査、予測又は評価を行い、その結果に基づき、その事業に係る環境の保全について適正に配慮することを推進するため、必要な措置を講ずるものとする。

(規制等の措置)

第十三条 県は、公害を防止するため、公害の原因となる行為に関し、必要な規制の措置を講じなければならない。

2 県は、自然環境の保全を図るため、自然環境の適正な保全に支障を及ぼすおそれがある行為に関し、必要な規制の措置を講じなければならない。

3 前二項に定めるもののほか、県は、環境の保全上の支障を防止するため、必要な規制、指導その他の措置を講ずるように努めなければならない。

(誘導の措置)

第十四条 県は、県民、事業者又はこれらの者の組織する民間の団体(以下「県民等」という。)が自らの行為に係る環境への負荷の低減のための施設の整備その他の適切な措置をとることを誘導することにより環境の保全上の支障を防止するため、必要な措置を講ずるように努めるものとする。

(施設の整備等の推進)

第十五条 県は、緩衝地帯その他の環境の保全上の支障を防止するための公共的施設の整備及び絶滅のおそれのある野生動植物の保護増殖その他の環境の保全上の支障を防止するための事業を推進するため、必要な措置を講ずるものとする。

2 県は、下水道その他の環境の保全上の支障の防止に資する公共的施設の整備及び森林の整備その他の環境の保全上の支障の防止に資する事業を推進するため、必要な措置を講ずるものとする。

3 県は、公園その他の公共的施設の整備その他の自然環境の適正な整備及び健全な利用のための事業を推進するため、必要な措置を講ずるものとする。

4 県は、前二項に定める公共的施設の適切な利用を促進するための措置その他のこれらの施設に係る環境の保全及び創造上の効果が増進されるために必要な措置を講ずるものとする。

(水環境の保全等)

第十六条 県は、河川、沿岸海域等の水質に対する汚濁の負荷の低減、森林、農地等の水源をかん養する機能の向上、水辺地等の人と自然との触れ合いの場の確保等を図ることにより、良好な水環境が保全され、及び創造されるように、必要な措置を講ずるものとする。

(森林及び緑地の保全等)

第十七条 県は、緑豊かな県土が生物の多様性、人と自然との豊かな触れ合い等に寄与していることにかんがみ、森林及び緑地を保全し、並びに緑化を推進するため、必要な措置を講ずるものとする。

(良好な景観の形成等)

第十八条 県は、地域の環境の特性に配慮した良好な景観の形成及び歴史的文化的遺産の保全を図るため、必要な措置を講ずるものとする。

(資源の循環的な利用等の促進等)

第十九条 県は、環境への負荷の低減を図るため、県民等による資源の循環的な利用、エネルギーの有効な利用及び廃棄物の減量が促進されるように、必要な措置を講ずるものとする。

2 県は、環境への負荷の低減を図るため、県の施設の建設及び維持管理その他の事業の実施に当たっては、資源の循環的な利用、エネルギーの有効な利用及び廃棄物の減量に努めるものとする。

(事業者が行う環境管理の促進等)

第二十条 県は、事業者がその事業活動に係る環境への負荷の低減を図るために自主的に行う環境の保全に関する方針の策定、目標の設定、計画の作成及び実施、体制の整備並びにこれらの監査の実施等からなる環境管理が促進されるように、必要な措置を講ずるように努めるものとする。

2 県は、前項の環境管理を行うように努めるものとする。

(環境の保全及び創造に関する教育及び学習の振興等)

第二十一条 県は、環境の保全及び創造に関する教育及び学習の振興並びに広報活動の充実により県民等が環境の保全及び創造についての理解を深めるとともに県民等の環境の保全及び創造に関する活動を行う意欲が増進されるようにするため、必要な措置を講ずるものとする。

(県民等の自発的な活動の促進等)

第二十二条 県は、県民等が自発的に行う緑化活動、再生資源に係る回収活動その他の環境の保全及び創造に関する活動が促進されるように、必要な措置を講ずるものとする。

2 県は、市町村及び県民等と連携した環境の保全及び創造に関する活動を推進するため、必要な措置を講ずるように努めるものとする。

(情報の提供)

第二十三条 県は、環境の保全及び創造に関する教育及び学習の振興、県民等が自発的に行う環境の保全及び創造に関する活動の促進並びに市町村及び県民等と連携した環境の保全及び創造に関する活動の推進に資するため、個人及び法人の権利利益の保護に配慮しつつ環境の状況その他の環境の保全及び創造に関する必要な情報を適切に提供するように努めるものとする。

(調査及び研究開発の実施等)

第二十四条 県は、環境の保全及び創造に関する施策を策定し、及び適正に実施するため、環境の保全及び創造に関する事項について、情報の収集に努めるとともに、科学的な調査及び研究開発の実施並びに研究開発の成果の普及に努めるものとする。

(監視等の体制の整備)

第二十五条 県は、環境の状況を把握し、並びに環境の保全及び創造に関する施策を適正に実施するために必要な監視、測定、試験、検査等の体制の整備に努めるものとする。

(県民等の意見の反映)

第二十六条 県は、環境の保全及び創造に関する施策に県民等の意見を反映させるように必要な措置を講ずるものとする。

第四節 地球環境の保全及び国際協力

(地球環境の保全)

第二十七条 県は、県、市町村及び県民等がそれぞれの役割に応じて地球環境の保全に資するように行動するための指針を定めるとともに、これに基づく行動を積極的に促進するものとする。

2 県は、前項に定めるもののほか、地球環境の保全に資する施策を推進するものとする。

(国際協力)

第二十八条 県は、国及び関係機関と連携し、地球環境の保全に関する情報の提供等を行うことにより、地球環境の保全及び海外の地域の環境の保全に関する国際協力の推進に努めるものとする。

第五節 推進体制等の整備等

(推進体制等の整備)

第二十九条 県は、その機関相互の連携を図り、環境の保全及び創造に関する施策を総合的に調整し、及び推進するための体制を整備するものとする。

2 県は、市町村及び県民等と連携して、環境の保全及び創造に関する施策を推進するための体制の整備に努めるものとする。

(国及び他の地方公共団体との協力)

第三十条 県は、県の区域を越えた広域的な取組が必要とされる環境の保全及び創造に関する施策について、国及び他の地方公共団体と協力して、その推進に努めるものとする。

(財政上の措置)

第三十一条 県は、環境の保全及び創造に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるように努めるものとする。

(施行期日)

1 この条例は、公布の日から施行する。

(経過措置)

2 この条例の施行の際現に定められている環境の保全及び創造に関する県の基本的な計画であって、環境の保全及び創造に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るためのものは、第十条の規定により定められた環境基本計画とみなす。

(徳島県公害防止条例の一部改正)

3 徳島県公害防止条例(昭和四十六年徳島県条例第三十二号)の一部を次のように改正する。

〔次のよう〕略

(徳島県自然環境保全条例の一部改正)

4 徳島県自然環境保全条例(昭和四十七年徳島県条例第四十三号)の一部を次のように改正する。

〔次のよう〕略

(徳島県空き缶等の散乱の防止に関する条例の一部改正)

5 徳島県空き缶等の散乱の防止に関する条例(昭和六十三年徳島県条例第十二号)の一部を次のように改正する。

〔次のよう〕略

徳島県環境基本条例

平成11年3月25日 条例第11号

(平成11年3月25日施行)

体系情報
第6編 生/第6章 環境保全
沿革情報
平成11年3月25日 条例第11号