○もてなしの阿波とくしま観光基本条例
平成二十一年六月二十五日
徳島県条例第四十七号
もてなしの阿波とくしま観光基本条例をここに公布する。
もてなしの阿波とくしま観光基本条例
目次
前文
第一章 総則(第一条―第八条)
第二章 観光の振興に関する基本的施策(第九条―第十八条)
第三章 雑則(第十九条)
附則
徳島県は、太平洋側の地域、瀬戸内側の地域、山岳地域といった地域ごとに気候が異なり、全体として多様な変化に富んだ気候を有するとともに、鳴門の渦潮、県南部の海、剣山、吉野川等の心がいやされる豊かな自然に恵まれ、こうした環境の中で育てられたなると金時、すだち、阿波尾鶏、鳴門わかめ、鱧等の豊富な食材を有している。
また、徳島県は、世界に誇り得る阿波踊りをはじめ、阿波人形浄瑠璃、阿波藍、阿波和紙、阿波正藍しじら織、大谷焼といった伝統的な文化や産業、うだつの町並み、祖谷のかずら橋といった歴史的又は文化的な遺産等の魅力あふれる観光資源を有するほか、県民には長年の歴史と伝統に培われたあたたかいおもてなしの心が受け継がれるなど、多くの観光客を引き付ける観光地づくりの可能性に満ちあふれている。
観光は、少子高齢社会において将来の定住につながる交流人口の拡大に重要な役割を担うとともに、県民の本県の歴史、文化等に対する理解を深め、県民が地域への誇りと愛着を持つことができる活力に満ちた地域社会の実現を促進するものである。
そして、観光を支える産業は、旅行業や旅館業のみならず、本県の基幹産業である農林水産業や商工業をはじめとする幅広い分野の事業に及ぶ総合的なものであり、地域経済の活性化、雇用機会の拡大、潤いのある豊かな生活環境の創造等、様々な領域に貢献するものである。
こうした観光の振興を積極的に推進するためには、その基本的な方向性を明らかにし、行政のみならず、観光事業者や観光関係団体といった観光に携わるものはもとより、県民一人一人が観光の重要性を理解し、本県の魅力を高めることが必要であるとの共通の認識を持って、自主的かつ主体的に観光の振興のための活動に取り組んでいく必要がある。
さらに、観光の振興を通じて、豊かで活力に満ちた地域社会の実現、本県の経済の発展及び県民生活の向上につなげていかなければならない。
こうした認識の下、県、市町村、県民、観光事業者、観光関係団体等の総力を結集し、それぞれの立場で協働して観光の振興に関する施策を戦略的かつ積極的に推進するため、この条例を制定する。
第一章 総則
(目的)
第一条 この条例は、観光の振興に関し、基本理念を定め、並びに県の責務並びに県民、観光事業者及び観光関係団体の役割を明らかにするとともに、観光の振興に関する施策の基本となる事項を定めることにより、観光の振興を戦略的かつ積極的に推進し、もって豊かで活力に満ちた地域社会の実現、本県の経済の発展及び県民生活の向上に寄与することを目的とする。
一 観光事業者 旅行業、旅館業等の観光旅行者を対象とする事業を営む事業者その他の観光に関する事業を営む事業者をいう。
二 観光関係団体 観光の振興を目的として、観光事業者、行政機関等で構成する団体をいう。
三 県民等 県民、観光事業者、観光関係団体及びその他の地域社会を構成する者をいう。
(基本理念)
第三条 観光の振興は、県、市町村及び県民等がそれぞれの立場において協働し、一体となって、次に掲げる事項の実現を目指すことを基本理念として取り組まれなければならない。
一 他の都道府県及び外国の人々に対して本県の良さを周知し、多くの観光旅行者が繰り返し本県を訪れることにより、本県全体が活力あるものとなっていること。
二 すべての県民が、観光の振興への関与及び地域を訪れる人々との交流を通じて、地域に対する誇りと愛着を持ち、活力に満ちた地域社会を形成することにより、地域経済の発展がもたらす利益と豊かな県民生活を享受できていること。
三 創意工夫を生かした個性豊かな観光地が形成され、地域の歴史、文化、伝統等に培われたおもてなしの心により、高齢者、障がい者、外国人その他観光において特に配慮を要する者をはじめとする全ての人々が安心して快適に観光ができるよう配慮されていること。
四 地域の景観や自然環境と調和した徳島県ならではの魅力的な観光地が形成されていること。
(平二五条例五六・一部改正)
(県の責務)
第四条 県は、前条に規定する観光の振興についての基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、観光の振興に関する総合的かつ計画的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。
2 県は、基本理念にのっとり、県民等に対して観光の振興に関する共通の認識を持つことができるよう情報の提供を行うとともに、県民等が相互に連携し、一体となって観光の振興に取り組むことができるよう必要な支援及び総合調整を行うものとする。
(市町村との連携等)
第五条 県は、観光の振興に関する施策の策定及び実施に当たっては、市町村との連携に努めるものとする。
2 県は、地域の特性を生かした観光の振興に関する広域的な施策を実施する市町村に対し、情報の提供、技術的な助言等を行うものとする。
(県民の役割)
第六条 県民は、基本理念にのっとり、観光に対する関心及び理解を深めるとともに、観光旅行者を温かく迎え、地域の魅力を十分に伝えるため、観光に関するボランティア等の地域が一体となった観光の振興に関する取組に積極的に参画するよう努めるものとする。
2 県民は、県が実施する観光の振興に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(観光事業者の役割)
第七条 観光事業者は、基本理念にのっとり、自らが直接観光旅行者と接する機会を多く有し、観光の振興における中心的な立場にあることにかんがみ、観光に関する情報の発信、観光旅行者に対する心のこもったサービスの提供等の事業活動を通じ、本県を訪れる観光旅行者の満足度の向上に努めるものとする。
2 観光事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たっては、豊富な食材を生産する農林水産業等の地域における他の分野の事業者との連携に努めるものとする。
3 観光事業者は、県が実施する観光の振興に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(観光関係団体の役割)
第八条 観光関係団体は、基本理念にのっとり、観光に関する情報の発信、観光旅行者の誘致及び受入れ態勢の整備等に取り組むものとする。
2 観光関係団体は、県が実施する観光の振興に関する施策に協力するよう努めるものとする。
第二章 観光の振興に関する基本的施策
(観光振興基本方針)
第九条 県は、基本理念にのっとり、次に掲げる観光の振興についての基本方針に基づき、観光の振興に関する施策を策定し、及び実施するものとする。
一 自然、文化、歴史、産業等に関する観光資源の活用による地域の特性を生かした魅力ある観光地の形成を図ること。
二 徳島県ならではの魅力的な産品の創出を図るなど、観光地としての総合的な魅力の向上を促進すること。
三 自然体験活動、農林水産業に関する体験活動等を目的とする旅行等の新たな観光の分野の開拓を図るとともに、県内での宿泊や長期の滞在を伴う旅行を促進すること。
四 徳島県ならではのおもてなしの心と観光に関する利便性の向上により、県民等が一体となった観光旅行者の受入れ態勢の整備を促進すること。
五 本県の魅力を戦略的に発信するための取組を促進すること。
六 県内のすべての地域が活気にあふれ、活力に満ちたものとなるための取組を促進すること。
七 姉妹都市との交流や経済交流を通じて外国からの観光旅行者の誘致を図るなど、国際観光の振興に関する取組を促進すること。
八 県内の各地域間の連携及び四国地方、近畿地方等の近隣の地域の府県との連携による取組の推進により、広域的な観光の振興を図ること。
(観光振興基本計画)
第十条 知事は、観光の振興に関する施策を戦略的かつ積極的に推進するため、観光の振興に関する基本的な計画(以下「観光振興基本計画」という。)を定めるものとする。
2 知事は、観光振興基本計画を定めるに当たっては、県民等の意見を反映することができるよう必要な措置を講じるとともに、あらかじめ、徳島県観光審議会の意見を聴かなければならない。
3 知事は、観光振興基本計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
4 前二項の規定は、観光振興基本計画の変更について準用する。
5 知事は、観光振興基本計画に基づき実施された観光の振興に関する施策について、その成果の検証を行うものとする。
6 知事は、毎年度、前項に規定する検証の結果について、議会に報告し、意見を聴くとともに、当該検証の結果の概要を公表するものとする。
(阿波とくしま観光の日等)
第十一条 県民等において、広く観光についての関心と理解を深めるとともに、観光の振興に関する共通の認識を持つことができるよう、阿波とくしま観光の日及び阿波とくしま観光週間を設ける。
2 阿波とくしま観光の日とする日及び阿波とくしま観光週間とする期間は、知事が別に定める。
3 県は、阿波とくしま観光の日及び阿波とくしま観光週間の趣旨にふさわしい事業が実施されるよう努めるものとする。
(地域の観光の振興に関する総合力の向上等)
第十二条 県は、県内の各地域における観光地間の相互の連携を図るとともに、観光の振興に寄与する人材の活用、観光に関する情報の集約及び提供等の各地域の観光の振興に関する総合力の向上のために必要な施策を講ずるものとする。
2 県は、県内の観光地の一体感の醸成を図るため、観光地における観光旅行者に対する情報の表示等について統一された規格、色彩、デザイン等の活用を促進するなど必要な施策を講ずるものとする。
(観光の振興に寄与する人材の育成)
第十三条 県は、観光の振興に寄与する人材の育成を図るため、観光に関する事業に従事する者の知識及び能力の向上、地域の固有の文化、歴史等に関する知識の普及の促進等の必要な施策を講ずるものとする。
(自然環境及び良好な景観の保全等)
第十四条 県は、観光地における自然環境及び良好な景観の保全並びに環境美化の促進を図るため、自然体験活動を通じて県民等及び観光旅行者の自然環境及び良好な景観の保全並びに環境美化に対する理解の増進を図るなど必要な施策を講ずるものとする。
(安全及び安心の確保)
第十五条 県は、観光地において事故、災害等が発生した場合における必要な情報の提供等、観光旅行者が安全に安心して観光ができるようにするために必要な施策を講ずるものとする。
(広報及び啓発)
第十六条 県は、県民等の観光の振興に対する意識の高揚及び観光の振興に関する取組への積極的な参画が促進されるよう、観光の振興に関する広報及び啓発に努めるものとする。
(観光に関する統計の整備等)
第十七条 知事は、観光の振興に関する施策を効果的に実施するため、観光に関する情報の収集、観光に関する動向の調査及び分析等を行い、観光に関する統計の整備及び充実を図るとともに、その成果を県民等に提供するものとする。
(財政上の措置)
第十八条 県は、観光の振興に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるように努めるものとする。
第三章 雑則
附則
この条例は、公布の日から施行する。
附則(平成二五年条例第五六号)
この条例は、平成二十六年一月一日から施行する。