○徳島県県産材利用促進条例

平成二十四年十二月二十一日

徳島県条例第八十号

徳島県県産材利用促進条例をここに公布する。

徳島県県産材利用促進条例

目次

前文

第一章 総則(第一条―第十条)

第二章 県産材の利用の促進に関する指針(第十一条)

第三章 県産材の利用の促進に関する施策(第十二条―第十七条)

第四章 雑則(第十八条―第二十一条)

附則

温暖な気候の下、県土の約八割を山地が占め、その山々を縫うように河川が流れる豊かな自然の中で、私たちは、森林から木材、清らかな水等の多くの恩恵を受けながら生活している。

しかしながら、戦後に植林された森林の多くが木材として利用可能な段階を迎えたにもかかわらず、長期にわたる木材価格の低迷が林業の衰退及び森林管理の停滞を招き、森林の有する多面的機能の低下が懸念される状況にある。

このため、県では全国に先駆け、林業の再生から飛躍、そして次世代の林業を目指し、県産材を効率的かつ安定的に供給する体制を構築するとともに、多種多様な木材産業の立地により木の根元からこずえまでを総合的に利用する体制を構築してきた。

一方で、県民等においては、地球温暖化の進行に伴い、森林及び林業の重要性に対する意識が高まってきており、森林の有する多面的機能への理解が深まりつつある。

ここに、私たちは、本県の有する豊富で貴重な森林という資源の重要性を認識し、そこから生産される県産材を積極的に利用することで、豊かな自然に囲まれた郷土を維持し、森林がもたらす多くの恩恵を将来の県民に継承していくことを決意し、この条例を制定する。

第一章 総則

(目的)

第一条 この条例は、本県の林業及び木材産業の持続的かつ健全な発展、中山間地域の活性化をはじめとする本県の経済の振興並びに森林の有する多面的機能の向上を図るため、県産材の利用の促進に関し、基本理念を定め、県の責務並びに県民等、森林所有者、林業事業者、木材産業事業者及び建築関係事業者の役割を明らかにするとともに、県産材の利用の促進に関する施策の基本となる事項を定めることにより、県産材の利用の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び将来の県民の豊かな自然に囲まれたゆとりのある生活の実現に寄与することを目的とする。

(定義)

第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

 県産材 県内で生産された木材をいう。

 森林の有する多面的機能 県土の保全、水源のかん養、自然環境の保全、公衆の保健、地球温暖化の防止、林産物の供給等の森林の有する多面にわたる機能をいう。

 森林所有者 森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)第二条第二項に規定する森林所有者をいう。

 林業事業者 森林において森林施業(伐採、造林、保育その他の森林における施業をいう。以下同じ。)の事業を行う者をいう。

 木材産業事業者 木材の加工又は流通の事業を行う者をいう。

 建築関係事業者 建築物の設計又は施工の事業を行う者をいう。

(基本理念)

第三条 県産材の利用の促進は、本県の森林が災害から県民の生命及び財産を守っていること、県民の生活に必要な豊かな水を供給していること、多様な生物の生息の場になっていること等に鑑み、その恩恵に感謝するとともに、当該森林に対する愛着を持って行われなければならない。

2 県産材の利用の促進は、伐採、造林及び保育を繰り返すことにより本県において育まれてきた貴重な森林資源が枯渇することなく次世代に引き継がれるよう行われなければならない。

3 県産材の利用の促進は、木材がエネルギー源として利用すること及び再生産することが可能であって、大気中の二酸化炭素の量の増減に影響を与えない資源であることに鑑み、循環型社会の形成に資するよう行われなければならない。

(県の責務)

第四条 県は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、県産材の利用の促進に関する施策を総合的かつ計画的に策定し、及び実施するものとする。

(市町村との連携等)

第五条 県は、県産材の利用の促進に関する施策を策定し、及び実施するに当たっては、市町村との緊密な連携に努めるものとする。

2 県は、市町村が実施する県産材の利用の促進に関する施策を支援するため、技術的な助言その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(県民等の役割)

第六条 県民及び事業者(以下「県民等」という。)は、基本理念にのっとり、地域経済の活性化、森林の整備の推進等の県産材を利用する意義を認識し、日常生活及び事業活動を通じて、県産材の特性に応じた積極的な利用に努めるものとする。

2 県民等は、基本理念にのっとり、県及び市町村が実施する県産材の利用の促進に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(森林所有者の役割)

第七条 森林所有者は、基本理念にのっとり、森林の有する多面的機能の重要性を認識し、県産材を安定的に供給できるよう、その所有する森林の適切な管理及び整備に努めるものとする。

2 森林所有者は、基本理念にのっとり、県及び市町村が実施する県産材の利用の促進に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(林業事業者の役割)

第八条 林業事業者は、基本理念にのっとり、自らの事業活動を通じて、本県の有する森林資源を有効に利用できるよう樹種、林齢等の森林の現況の把握を図り、効率的な生産による県産材の安定的な供給に努めるものとする。

2 林業事業者は、基本理念にのっとり、県及び市町村が実施する県産材の利用の促進に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(木材産業事業者の役割)

第九条 木材産業事業者は、基本理念にのっとり、自らの事業活動を通じて、県産材の特性に応じた加工、多段階の利用(まず製品の原材料として利用し、再使用し、及び再生利用し、最終的にエネルギー源として利用することをいう。)等の有効利用に努め、その加工品を安定的に供給するとともに、これまで培われてきた高度な木材加工技術の継承及び更なる向上に努めるものとする。

2 木材産業事業者は、基本理念にのっとり、県及び市町村が実施する県産材の利用の促進に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(建築関係事業者の役割)

第十条 建築関係事業者は、基本理念にのっとり、自らの事業活動を通じて、県産材に係る知識の習得及び県産材の積極的な利用に努めるものとする。

2 建築関係事業者は、基本理念にのっとり、県及び市町村が実施する県産材の利用の促進に関する施策に協力するよう努めるものとする。

第二章 県産材の利用の促進に関する指針

第十一条 知事は、県産材の利用の促進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、県産材の利用の促進に関する指針(以下「利用指針」という。)を策定するものとする。

2 利用指針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。

 県産材の利用の促進のための施策に関する基本的事項

 県産材の利用の目標

 県産材の適切な供給の確保に関する基本的事項

 その他県産材の利用の促進に関し必要な事項

3 知事は、利用指針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なくこれを公表するとともに、市町村長に通知しなければならない。

第三章 県産材の利用の促進に関する施策

(県産材の利用の促進のための措置)

第十二条 県は、県産材の利用の促進及びそのための県産材の供給の安定を図るため、次に掲げる事項について必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

 森林資源の利用及び再生産を図るための森林の整備に関すること。

 県産材の生産に係る基盤の整備並びに森林施業の集約化及び人材の育成に関すること。

 県産材の加工及び流通の体制の整備に関すること。

 建築物、公共土木施設その他の工作物(以下「建築物等」という。)及びこれらに係る工事における県産材及び県産材を利用した製品の利用に関すること。

 合板、木質ボード等への加工、エネルギー源としての利用等の県産材の有効利用に関すること。

 県産材の利用の促進を担う技術者等の育成に関すること。

 県産材のブランド化(県産材及び県産材を利用した製品に対して信頼感等を与える独自の印象を創出することをいう。)及び産地の認証に関すること。

 県産材の新たな用途の開発及び国内外への販路の拡大に関すること。

(県の建築物等における県産材の利用等)

第十三条 県は、自ら行う建築物の整備に当たっては、利用指針で定めるところにより、木造とすることが適当でないもの又は困難であると認められるもの以外のものについては、原則として木造とするものとする。

2 県は、県民等による県産材の利用を促すため、自ら整備する建築物等及びこれらに係る工事において、率先して県産材及び県産材を利用した製品の利用に努めるものとする。

(情報の提供)

第十四条 県は、林業事業者による県産材及び木材産業事業者による県産材の加工品の安定的な供給並びに建築関係事業者による県産材の利用の推進が図られるよう、県産材その他の木材の流通及び消費の動向を把握するとともに、県産材の利用の促進に関する情報の提供に努めるものとする。

(普及啓発)

第十五条 県は、森林の有する多面的機能及び断熱性、調湿性、紫外線を吸収する効果、景観の向上、癒やしの醸成等の木材の有する機能を研究し、その成果及び県産材を利用する意義に関する知識の普及に努めるものとする。

2 県は、県民等が県産材に親しむための催しの開催等に努めるものとする。

3 県は、木育(県民の生活に必要な物資としての木の良さ及びその利用の意義を学ぶ活動をいう。)の推進に努めるものとする。

(県産材利用推進月間)

第十六条 県民等の間に広く県産材についての関心と理解を深めるとともに、積極的に県産材を利用する意欲を高めるため、県産材利用推進月間を設ける。

2 県産材利用推進月間は、十月とする。

3 県は、県産材利用推進月間の趣旨にふさわしい事業が実施されるよう努めるものとする。

(体制の整備等)

第十七条 県は、県産材の利用を促進するための拠点の整備に努めるものとする。

2 県は、県、市町村、県民等、森林所有者、林業事業者、木材産業事業者、建築関係事業者、大学等が協働して県産材の利用を推進することができる体制の整備に努めるものとする。

3 県は、木材産業事業者、学校等と連携し、県産材を利用した製品に児童、生徒、学生等の発想を活用することができるよう努めるものとする。

第四章 雑則

(顕彰)

第十八条 県は、県産材の利用の促進に関し特に優れた取組を行った者の顕彰を行うよう努めるものとする。

(財政上の措置)

第十九条 県は、県産材の利用の促進に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

(実施状況の公表等)

第二十条 知事は、毎年一回、県産材の利用の促進に関する施策の実施の状況を取りまとめ、徳島県森林審議会に報告するとともに、これを公表しなければならない。

(補則)

第二十一条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、知事が別に定める。

1 この条例は、平成二十五年四月一日から施行する。

2 この条例の施行の際現に策定されている県産材の利用の促進に関する県の指針であって、県産材の利用の促進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るためのものは、第十一条第一項の規定により策定された利用指針とみなす。

徳島県県産材利用促進条例

平成24年12月21日 条例第80号

(平成25年4月1日施行)