○徳島県主要農作物等種子条例
令和三年三月十九日
徳島県条例第二十八号
徳島県主要農作物等種子条例をここに公布する。
徳島県主要農作物等種子条例
稲、麦、大豆といったいわゆる主要農作物は、本県の農業の基幹品目であり、私たちの食生活を支えるとともに、県内各地で集落を築き、維持する基礎となり、多様な食文化や伝統行事を育んできた。
また、山間地域では、あわ、きび、たかきび、ひえ、しこくびえ、そばといった雑穀類やごうしゅいもを中心とした本県固有の傾斜地農業が営々と継承されている。
加えて、徳島藩の奨励により、江戸時代中期から明治時代にかけて一大産業として全国にその名をはせた藍作は、今も本県の伝統産業として受け継がれている。
こうした中、平成三十年三月には、「にし阿波の傾斜地農耕システム」が、国際連合食糧農業機関から世界農業遺産として、また、令和元年五月には、「藍のふるさと 阿波」が、文化庁から日本遺産として、それぞれ認定され、私たちにとって大きな喜びや誇りとなっている。
私たちは、先人から受け継いだこうした農業やその関連産業と文化を決して絶やすことなく、次代に引き継ぐ使命を担っている。
このような認識の下、主要農作物等にとって種子が、一度失うと二度と取り戻すことのできない貴重な資源であり、その生産の根幹となるものであることに鑑み、当該種子の生産についての基本理念を明らかにし、優良な種子を安定的に生産することによって、本県の主要農作物等に係る農業及びその関連産業並びに文化が将来にわたって途切れることなく引き継がれるよう、この条例を制定する。
(目的)
第一条 この条例は、主要農作物等の種子の生産について、基本理念を定め、県の責務を明らかにするとともに、県が実施する施策について必要な事項を定めることにより、主要農作物等の優良な種子の安定的な確保を図り、もって本県における主要農作物等に係る農業の振興及びその関連産業の発展並びに文化の継承に寄与することを目的とする。
一 主要農作物 稲、大麦、裸麦、小麦及び大豆をいう。
二 主要農作物等 主要農作物並びにあわ、きび、たかきび、ひえ、しこくびえ、そば、ごうしゅいも及びたであいをいう。
三 種子 種子及びごうしゅいもの塊茎をいう。
(基本理念)
第三条 主要農作物の優良な種子は、本県の農業の持続的な発展に不可欠なものであり、その生産は、当該種子を需要に応じて安定的に供給することを旨として、県並びに種子生産者及び種子生産団体その他の関係団体の相互の連携及び協力の下に、行われなければならない。
2 主要農作物等の種子の生産は、自然災害等により種子の供給が不安定になるおそれがあること並びに優良な種子が本県における食料の安定供給、農業の振興及びその関連産業の発展並びに文化の継承に不可欠なものであることを、県並びに種子生産者及び種子生産団体その他の関係団体の共通認識として、行われなければならない。
(県の責務)
第四条 県は、前条に定める基本理念にのっとり、主要農作物の優良な種子の生産に係る施策を計画的に推進するとともに、必要な推進体制の整備を図るものとする。
2 県は、前項の施策の推進及び推進体制の整備に当たっては、種子生産者及び種子生産団体その他の関係団体と連携を図るものとする。
3 県は、主要農作物等のうち、本県における農業の振興及びその関連産業の発展並びに文化の継承に資すると認める品種又は系統について、その種子を、適切に保存するものとする。
(種子生産計画)
第五条 県は、毎年度、主要農作物の需給の見通し、種子の生産及び流通の状況その他の事情を勘案して、種子の供給に取り組む主要農作物の品種について、優良な種子の生産に関する計画(以下「種子生産計画」という。)を策定するものとする。
2 種子生産計画には、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 主要農作物の種子の需要の見通し
二 主要農作物の種子の生産に関する事項
三 主要農作物の種子の生産を行うために必要な主要農作物の原種の生産に関する事項
四 その他主要農作物の優良な種子の安定的な生産に関し必要な事項
(原種及び原原種の生産)
第六条 県は、種子生産計画に基づき、主要農作物の優良な種子の生産を行うために必要な原種及び当該原種の生産を行うために必要な原原種の生産を行うものとする。
(種子生産ほ場の指定)
第七条 県は、種子生産計画に基づき、主要農作物の優良な種子の生産に適すると認めるほ場を、そのほ場を経営する種子生産者の申請により、指定種子生産ほ場として指定することができる。
(種子の品質確保)
第八条 県は、前条に規定する指定種子生産ほ場(以下「指定種子生産ほ場」という。)で生産される種子の品質を確保するため、ほ場審査(指定種子生産ほ場において栽培中の主要農作物の出穂、穂ぞろい、成熟状況等について審査することをいう。)及び生産物審査(指定種子生産ほ場において生産された主要農作物の種子の発芽の良否、不良な種子及び異物の混入状況等について審査することをいう。)を行うものとする。
(指導等)
第九条 県は、種子生産者及び種子生産団体その他の関係団体に対し、主要農作物等の優良な種子の安定的な生産について、必要な指導及び助言を行うものとする。
(県民の理解の促進)
第十条 県は、主要農作物等の優良な種子の生産の重要性について、県民の理解の促進に努めるものとする。
(財政上の措置)
第十一条 県は、主要農作物等の優良な種子の生産に係る施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
(委任)
第十二条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、知事が別に定める。
附則
1 この条例は、公布の日から施行する。
2 この条例の施行の際現に策定されている種子の生産に関する県の計画であって、県が種子の供給に取り組む主要農作物の品種に係る優良な種子の生産に関するものは、第五条第一項の規定により策定された種子生産計画とみなす。