○徳島県治水及び利水等流域における水管理条例
平成二十八年十二月二十二日
徳島県条例第七十二号
徳島県治水及び利水等流域における水管理条例をここに公布する。
徳島県治水及び利水等流域における水管理条例
目次
前文
第一章 総則(第一条―第十条)
第二章 治水
第一節 河川等の整備及び維持管理(第十一条―第十八条)
第二節 浸水被害を防ぐ土地利用(第十九条―第二十八条)
第三節 河川に係る情報等の収集及び提供(第二十九条・第三十条)
第三章 利水(第三十一条―第四十四条)
第四章 水循環及び環境(第四十五条―第五十一条)
第五章 災害対応(第五十二条―第五十八条)
第六章 水教育(第五十九条―第六十四条)
第七章 罰則(第六十五条・第六十六条)
附則
生命の源である水は、蒸発、降下、流下又は浸透により、海域に至る過程で、河川の流域を中心に循環し、人の生活や産業活動などとの深い関わりを築いてきた。県土の約四分の三を森林が占める本県では、その中を縫うように、大小の河川が縦横に流れ、これらの河川は、水を提供し、美しい環境を形づくり、人々の心を癒やすなど、県民生活に欠かせない存在となっている。
しかし、吉野川流域では、豊かな水と流域一帯の肥沃な土壌が阿波藍をはじめとする文化を育んできたものの、高石垣や上げ舟などの各地に残る洪水遺跡が示すように、古来から浸水被害に苦しめられてきた。現在も、分水による利水が四国全体に大きな恩恵を与えている一方で、本県では浸水被害が繰り返されている。また、本県有数の穀倉地や工業地帯を有する那賀川流域でも、全国一の日降水量を記録するなどの厳しい自然環境ゆえに洪水はもとより、それに相反する渇水に、長年にわたって苦渋を味わうなど、水に関わる労苦の歴史が積み重ねられてきた。さらに、南海トラフを震源とする巨大地震及び中央構造線活断層帯を震源とする直下型地震の発生も危惧され、治水だけでなくあらゆる災害対応も課題となっている。
近年、人口構造の変化、地球温暖化に伴う気候変動などの多様な要因が水循環に変化を生じさせ、それに伴い、更に深刻な洪水や渇水の発生が懸念されるなど、水問題は、まさに新しい局面を迎えており、川がもたらす甘苦に通じた本県ならではの新たな次元の水管理が求められている。
ここに、私たちは、先人の絶え間ない治水の労苦の歴史に鑑み、治水の上に利水が成り立つとの考えの下、いかなる水災害にも正面から立ち向かい、県民の尊い生命と財産を守るため、英知を結集した総合的な水管理に、総力を挙げて取り組むことを決意し、将来の世代に対する責務として、この条例を制定する。
第一章 総則
(目的)
第一条 この条例は、地球温暖化に伴う気候変動等により発生が懸念される深刻な洪水等及び渇水から、県民の生命、身体及び財産を保護するため、豊かな自然環境の下で推進する治水及び利水をはじめとする流域における水管理について、基本理念を定め、県民、用水利用者及び水利使用者の役割並びに県の責務を明らかにするとともに、流域における水管理の基本となる施策を定めることにより、本県ならではの流域における水管理を総合的かつ計画的に推進し、もって水災害に強い社会の構築を図り、県民の安全で豊かな暮らしの実現に寄与することを目的とする。
一 水循環 水循環基本法(平成二十六年法律第十六号)第二条第一項に規定する水循環をいう。
二 健全な水循環 水循環基本法第二条第二項に規定する健全な水循環をいう。
三 水管理 健全な水循環を実現するための水の管理をいう。
四 雨水出水 水防法(昭和二十四年法律第百九十三号)第二条第一項に規定する雨水出水をいう。
五 水災害 洪水、雨水出水若しくは高潮(以下「洪水等」という。)又は津波による浸水被害及び少雨による渇水被害をいう。
六 水教育 水に関わる労苦の歴史及び文化並びに健全な水循環の重要性についての県民の理解と関心を深め、水に関わる労苦の歴史及び文化を次代に継承するために、家庭、学校、地域その他のあらゆる場において行われる水に関する教育及びこれに準ずる啓発活動をいう。
七 河川管理施設等 河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)第三条第二項(同法第百条第一項において準用する場合を含む。)に規定する河川管理施設(以下「河川管理施設」という。)、砂防法(明治三十年法律第二十九号)第一条に規定する砂防設備及び海岸法(昭和三十一年法律第百一号)第二条第一項に規定する海岸保全施設をいう。
八 雨水貯留浸透施設 雨水を一時的に貯留し、又は地下に浸透させる機能を有する施設であって、洪水又は雨水出水による浸水被害の防止を目的とするものをいう。
九 農業用水 土地改良法(昭和二十四年法律第百九十五号)第二条第二項に規定する土地改良事業又はこれに準ずる事業により整備される農業用用水路により供給される水をいう。
十 水道用水 水道法(昭和三十二年法律第百七十七号)第三条第一項に規定する水道により供給される水をいう。
十一 工業用水 工業用水道事業法(昭和三十三年法律第八十四号)第二条第二項に規定する工業用水をいう。
十二 用水利用者 農業用水、水道用水及び工業用水を利用する者をいう。
十三 水利使用者 河川法第二十三条(同法第百条第一項において準用する場合を含む。)の許可を受けた者及び同法第二十三条の二(同法第百条第一項において準用する場合を含む。)の登録を受けた者をいう。
(基本理念)
第三条 流域における水管理は、地球温暖化に伴う気候変動等により発生が懸念される深刻な洪水等及び渇水、南海トラフを震源とする巨大地震、中央構造線活断層帯等を震源とする直下型地震並びに津波等の自然災害並びに人口減少及び少子高齢化等による著しい社会環境の変化に対して、県民の安全及び安心が確保できるよう、強靱な県土づくりを旨として行われなければならない。
2 流域における水管理は、先人の絶え間ない治水の労苦の歴史に鑑み、治水の上に利水が成り立つとの考えの下、洪水等による浸水被害の防止を最優先として、県民が健全な水循環の恩恵を最大限に享受できるよう行われなければならない。
3 流域における水管理は、水に関わる労苦の歴史及び文化並びに健全な水循環の重要性に対する理解と関心を深めるための水教育を推進し、県民、県、市町村その他の関係者が、それぞれの役割分担の下に流域全体で総合的かつ一体的に行われなければならない。
(県民の役割)
第四条 県民は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、平常時から水災害に対する危機意識を持って、自らの安全を自ら守るため、積極的に水災害対策(水災害を未然に防止し、及び水災害が発生した場合における被害の拡大を防ぐための対策をいう。以下同じ。)を実施するよう努めるものとする。
2 県民は、基本理念にのっとり、平常時から水災害及び水災害対策に関する研修並びに水災害の発生を想定した訓練に積極的に参加し、水災害及び水災害対策に関する知識及び技能の習得に努めるものとする。
3 県民は、基本理念にのっとり、国、県、市町村その他の関係者が実施する水災害対策に積極的に協力するよう努めるものとする。
4 県民は、基本理念にのっとり、水教育に積極的に参加することにより、水に関わる労苦の歴史及び文化並びに健全な水循環の重要性に対する理解と関心を深めるよう努めるものとする。
(用水利用者及び水利使用者の役割)
第五条 用水利用者及び水利使用者は、基本理念にのっとり、平常時から節水及び合理的な水の利用に努めるとともに、国、県、市町村その他の関係者が実施する水災害対策及び利水に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(県の責務)
第六条 県は、基本理念にのっとり、流域における水管理を総合的かつ計画的に推進するとともに、県民、用水利用者、水利使用者、河川法第五十八条の八第一項(同法第百条第一項において準用する場合を含む。)の河川協力団体、第四十二条第一項の利水サポート団体、水防団、市町村その他の関係者が実施する水管理を支援し、並びに関係者間の連携及び協力を推進するための体制の整備を図るものとする。
(流域水管理計画)
第七条 知事は、流域における水管理を総合的かつ計画的に推進するため、県の全域及び規則で定める流域ごとに、それぞれ、流域における水管理に関する計画(以下「流域水管理計画」という。)を定めるものとする。
2 流域水管理計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 流域における水管理に関する課題
二 流域における水管理に関する目標
三 前二号に掲げるもののほか、流域における水管理の推進に関し必要な事項
3 知事は、流域水管理計画を定めるに当たっては、県民、学識経験者、関係行政機関その他の関係者の意見を反映することができるよう必要な措置を講ずるものとする。
4 知事は、流域水管理計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
5 前二項の規定は、流域水管理計画の変更について準用する。
(徳島県水防の日)
第八条 県民一人一人が、水防についての認識を深め、水防活動の一層の充実を図るため、徳島県水防の日を設ける。
2 徳島県水防の日は、六月五日とする。
3 県は、徳島県水防の日の趣旨にふさわしい行事が実施されるよう努めるものとする。
(顕彰)
第九条 県は、流域における水管理の推進に関し、功績の顕著な者の顕彰に努めるものとする。
(財政上の措置)
第十条 県は、流域における水管理に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
第二章 治水
第一節 河川等の整備及び維持管理
(河川及び河川管理施設等の整備及び維持管理)
第十一条 県は、その管理する河川及び河川管理施設等について、次に掲げるところにより、整備及び維持管理を行うものとする。
一 河道の拡幅及び掘削、堤防の整備、洪水調節施設(一時的に洪水流量又は雨水の一部を貯留し、又は調節する施設をいう。以下同じ。)の設置等の対策を効果的に組み合わせて効率的に実施すること。
二 河川の流水を流下させる能力(以下「流下能力」という。)を著しく阻害する河川内の堆積土砂、樹木等の除去を適切に実施すること。
三 流下能力の不足のため、著しい浸水被害が発生した箇所については、再度災害を防止し、又は軽減するための対策を実施すること。
四 高潮、地震又は津波により相当な被害が想定される箇所については、計画的な整備及び適正な維持管理を実施すること。
(下水道の管理に係る支援等)
第十二条 県は、市町村が行う下水道法(昭和三十三年法律第七十九号)第二条第三号に規定する公共下水道又は同条第五号に規定する都市下水路の設置、改築、修繕、維持その他の管理について、情報の提供、技術的な助言その他の必要な支援を行うとともに、市町村と連携し、及び協力して、雨水出水による浸水被害を防止し、又は軽減するための対策に積極的に取り組むものとする。
(河川管理施設等の能力を上回る外力への対応)
第十三条 県は、その管理する河川管理施設等について、当該河川管理施設等の能力を上回る外力が加えられる場合があることを考慮し、当該場合においても、住民が避難時間を確保できるよう、必要な整備に努めるものとする。
2 県は、その管理する河川管理施設等について、地球温暖化に伴う気候変動等による外力の増大に対応した施設の改造その他の措置がより容易に行えるよう配慮した計画及び設計に努めるものとする。
(総合的な土砂の管理)
第十四条 県は、流域の土砂の管理について、国、市町村その他の関係者と連携して、総合的な土砂の管理計画を策定するとともに、必要に応じ、次に掲げるところにより取り組むものとする。
一 土砂の除去並びに除去した土砂の流通及び利用を図る対策を実施すること。
二 山地の荒廃及び急激な土砂の流出を防ぐ対策を実施すること。
三 河道、海岸汀線等の変化の観測及び河川における土砂の動態の把握に努めること。
四 海岸の侵食を防ぐ対策を実施すること。
(県民との協働による維持管理)
第十五条 県は、その管理する河川及び河川管理施設の維持管理について、県民との協働により行う草木及び堆積土砂の除去等の活動を推進するものとする。
(河川管理施設等の計画的な維持管理等)
第十六条 県は、その管理する河川管理施設等について、施設の老朽化及び損傷等による機能の喪失を防ぐため、計画的に維持管理及び更新を実施するものとする。
2 県は、前項に規定する維持管理及び更新の実施に当たっては、国等が定める技術的な基準を満たすとともに、県民が必要とする施設能力の向上を図る機能の付加に努めるものとする。
(河川管理施設等の機能の活用)
第十八条 県は、次に掲げるところにより、河川管理施設等の機能を最大限に活用できるよう努めるものとする。
一 県以外の排水施設及び洪水調節施設の管理者と浸水被害の防止又は軽減を図るための管理及び運用方法について一層の連携を行うこと。
二 排水ポンプ車の機動的で円滑な運用について、市町村その他の関係者と一層の連携を行うこと。
第二節 浸水被害を防ぐ土地利用
(浸水被害を防ぐ地域づくり)
第十九条 県は、市町村と連携して、洪水等及び津波による浸水被害から県民の生命、身体及び財産を保護することのできる地域づくりに努めるものとする。
2 県は、前項に規定する地域づくりが円滑に進むよう、必要に応じ、都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第四条第一項に規定する都市計画その他の土地の利用に関する計画を活用するものとする。
3 土地の形質を変更する行為であって規則で定めるもの(以下「開発行為」という。)をしようとする者は、開発行為をしようとする土地の区域及びその周辺の地域(以下「開発区域等」という。)における当該開発行為に起因する浸水被害を防止するため、雨水貯留浸透施設又は排水路(以下「雨水貯留浸透施設等」という。)を設置し、及び当該雨水貯留浸透施設等の機能を維持するよう努めなければならない。
4 知事は、開発区域等における浸水被害を防止するため必要があると認めるときは、前項に規定する雨水貯留浸透施設等の設置又は機能の維持を行わない者に対し、必要な措置を講ずるよう指導し、又は勧告することができる。
一 水防法第十五条第一項第四号ロに規定する要配慮者利用施設の所有者又は管理者 同法第十五条の三第一項の規定による計画の作成、同条第五項の規定による訓練の実施及び同条第七項の規定による自衛水防組織の設置
二 水防法第十五条第一項第四号ハに規定する大規模工場等の所有者又は管理者 同法第十五条の四第一項の規定による計画の作成、訓練の実施及び自衛水防組織の設置
三 津波防災地域づくりに関する法律(平成二十三年法律第百二十三号)第七十一条第一項に規定する避難促進施設の所有者又は管理者 同項の規定による避難確保計画の作成
(平二九条例四四・令三条例四三・一部改正)
(災害危険区域の指定)
第二十二条 知事は、洪水又は雨水出水による浸水被害が発生するおそれのある区域における浸水被害を防止し、又は軽減するため、河川又は河川管理施設の整備を実施する場合において、これらの整備と併せて当該区域の一部を建築基準法第三十九条第一項の規定による災害危険区域として指定することができる。
2 知事は、前項の規定による指定(以下「指定」という。)をしようとするときは、あらかじめ、河川又は河川管理施設の整備、雨水の流出抑制その他の浸水被害の防止又は軽減を図るための措置に関する総合的な計画を策定し、指定をしようとする区域における想定浸水位(当該計画において定める降雨による洪水又は雨水出水により浸水した場合に想定される水位をいう。以下同じ。)を明らかにしなければならない。
3 知事は、指定をしようとするときは、あらかじめ、関係市町村長の意見を聴かなければならない。
4 知事は、指定をするときは、当該指定の区域及び想定浸水位を告示するとともに、その旨を関係市町村長に通知しなければならない。これを廃止するときも、同様とする。
5 災害危険区域の指定及び廃止は、前項の告示によってその効力を生ずる。
(河川等出水警戒区域における建築物の建築の制限)
第二十三条 河川等出水警戒区域(指定がなされた災害危険区域をいう。)において、次に掲げる用途に供する建築物の建築(同一敷地内の移転を除く。以下同じ。)をしようとする建築主は、当該建築物が次条各号のいずれかに適合するものであることについて、当該工事に着手する前に、知事の認定を受けなければならない。ただし、規則で定める建築物については、この限りでない。
一 住宅、共同住宅、長屋及び寄宿舎
二 児童福祉施設等(規則で定める施設を含む。)
三 旅館業法(昭和二十三年法律第百三十八号)第二条第一項に規定する旅館業の営業の用に供する施設
四 医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第一条の五第一項に規定する病院及び同条第二項に規定する診療所のうち患者を入院させるための施設を有するもの
五 宿泊室を有する研修施設
2 指定の際現に当該災害危険区域に存する建築物(建築の工事中の建築物を含む。)の増築又は改築をしようとする場合においては、当該増築又は改築に係る部分以外の建築物の部分に対しては、前項の規定は、適用しない。
3 第一項の認定を受けようとする建築主は、規則で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書に、規則で定める図書を添付して、知事に提出しなければならない。
一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあってはその代表者の氏名
二 建築しようとする建築物の敷地の位置及び地盤面の高さ(建築物が周囲の地面と接する位置のうち最も低い位置の高さをいう。以下同じ。)
三 建築しようとする建築物の構造
四 建築しようとする建築物の用途
五 建築しようとする建築物の敷地の想定浸水位
六 建築しようとする建築物の居室の位置及び床面の高さ
七 その他規則で定める事項
一 敷地の地盤面の高さ及び居室の床面の高さが想定浸水位より高い位置にあること。
二 主要構造部(壁、柱及びはりのうち、構造耐力上主要な部分に限る。)が鉄筋コンクリート造、鉄骨造その他これらに類する構造であり、かつ、居室の床面の高さが想定浸水位より高い位置にあること。
三 前二号に定めるもののほか、これらと同等以上の安全性を確保することができる建築物として規則で定めるものであること。
(認定の条件等)
第二十五条 知事は、洪水又は雨水出水による浸水被害から県民の生命、身体及び財産を保護するため必要があると認めるときは、第二十三条第一項の認定に条件を付することができる。
2 知事は、第二十三条第一項の認定をしたときは、規則で定めるところにより、認定証を交付しなければならない。
3 前項の認定証の交付を受けた後でなければ、建築物の建築の工事は、することができない。
(認定の取消し等)
第二十七条 知事は、第二十三条第一項各号に掲げる用途に供する建築物の建築主が、次の各号のいずれかに該当するときは、同項若しくは前条第一項の認定を取り消し、若しくは当該認定に付した条件を変更し、又は当該建築主に対して、当該建築物の建築の工事の停止を命じ、若しくは相当の猶予期限を付けて、必要な措置をとることを命ずることができる。
(雨水の浸透及び保持等に係る機能の維持)
第二十八条 農地、森林等を所有し、又は使用収益する権原を有する者は、その土地が有する雨水を浸透させ、及び保持する機能の保全に努めるものとする。
2 県は、農地、森林その他の雨水を浸透させ、及び保持する機能を有する土地並びに当該機能の保全のために必要な事項を明らかにするものとする。
3 県は、流域における生態系の有する洪水等及び津波による浸水被害を防止し、又は軽減する機能が持続的に発揮されるよう、生態系の保全及び再生に資する必要な支援に努めるものとする。
第三節 河川に係る情報等の収集及び提供
(情報基盤の整備)
第二十九条 県は、水災害による被害を防止し、又は軽減するため、県が管理する河川の水位、降雨量の状況、関係するダムの貯水位その他の必要な情報を収集し、国、市町村、県民その他の関係者に提供するものとする。
2 県は、前項に規定する情報の収集及び提供に当たっては、情報通信の技術の利用その他の迅速かつ的確な方法により行うものとし、必要な施設及び設備の整備及び維持管理に努めるものとする。
(事前防災行動計画等の情報提供)
第三十条 県は、洪水等が発生し、又は発生するおそれがある場合における県民の迅速かつ円滑な避難を確保するため、必要に応じ、当該場合において国、県、市町村、県民その他の関係者がとるべき行動を明らかにした計画(以下「事前防災行動計画」という。)が策定されるよう、国、市町村等と連携協力して取り組むものとする。
2 県は、事前防災行動計画が策定されたときは、その内容を県民に情報提供するものとする。
3 県民は、事前防災行動計画にのっとり、適切に行動するよう努めるものとする。
4 県は、洪水等が発生し、又は発生するおそれがある場合における県民の迅速かつ円滑な避難を確保するため、水防法第十四条第一項及び第二項に規定する洪水浸水想定区域、同法第十四条の二第一項及び第二項に規定する雨水出水浸水想定区域及び同法第十四条の三第一項に規定する高潮浸水想定区域を、県民に情報提供するものとする。
5 県は、水防法第十五条第三項の規定により市町村長が行う印刷物の配布その他の措置が円滑に実施されるよう、必要な協力を行うものとする。
(令三条例四三・一部改正)
第三章 利水
(貯留機能の維持及び向上)
第三十一条 県は、その管理するダムについて、安定的な水の供給に資するため、貯留機能を維持し、及び向上させるための必要な対策を講ずるものとする。この場合において、治水機能を有するダムにあっては、治水機能を確保した上で、当該対策を講じなければならない。
(水利用の現状の検証等)
第三十二条 県は、その管理するダムについて、ダム完成後の社会経済情勢の変化を勘案し、必要に応じ、水利用の現状を検証するとともに、その結果に基づき、利水に関する計画の見直しを行うよう努めるものとする。
(堆積土砂に係る総合的な対策)
第三十三条 県は、その管理するダムについて、ダムの貯水池内の堆積土砂の除去に加え、当該貯水池の上流に位置する県が管理する河川内の堆積土砂の除去を含めた堆積土砂に係る総合的な対策を講ずるよう努めるものとする。
(県以外の管理者への要請等)
第三十四条 知事は、必要があると認める場合は、県以外のダムの管理者に対して、基本理念にのっとり、前三条の規定に準じた措置を講ずるよう要請し、又は協力を求めるものとする。
(堰堤の活用)
第三十五条 県は、その管理する砂防堰堤及び治山堰堤の構造及び機能に支障のない範囲内において、当該堰堤に貯留されている流水の利用に努めるとともに、水利使用者(新たに水利使用者になろうとする者を含む。第四十一条において同じ。)に対して堰堤に係る流水の適正な活用に関する助言その他の必要な協力を行うよう努めるものとする。
(農業用水施設における適正な水の管理等)
第三十六条 農業用水施設(農業用水を供給する施設をいう。以下同じ。)を管理する者は、その管理する施設を良好な状態に保つように維持し、修繕し、もって水の利用が適正に行われるよう努めるものとする。
2 県は、安定的かつ効率的な農業用水の利用に資するため、農業用水施設を適正に保全するための施策を講ずるものとする。
(水道事業者に対する支援)
第三十七条 県は、安定的かつ効率的な水道用水の利用に資するため、水道法第三条第五項に規定する水道事業者に対し、水道施設(同条第八項に規定する水道施設をいう。以下同じ。)を適正に保全するための情報の提供、技術的な助言その他の必要な支援に努めるものとする。
(工業用水施設における適正な水の管理等)
第三十八条 工業用水施設(工業用水を供給する施設をいう。以下同じ。)を管理する者は、その管理する施設を良好な状態に保つように維持し、修繕し、もって水の利用が適正に行われるよう努めるものとする。
2 県は、安定的かつ効率的な工業用水の利用に資するため、工業用水施設を適正に保全するための施策を講ずるものとする。
(指導)
第三十九条 知事は、農業用水施設、水道施設又は工業用水施設のうち、水利使用者(河川法第八十七条(同法第百条第一項において準用する場合を含む。)の規定により同法第二十三条(同法第百条第一項において準用する場合を含む。)の許可又は同法第二十三条の二(同法第百条第一項において準用する場合を含む。)の登録を受けたものとみなされる者を除く。)が設置した流路を形成する工作物(農地、水道施設の浄水場又は工場に至るまでの間に限る。)について、損傷等の異常を発見した場合は、当該工作物の管理者に対し、適切な措置を講ずるよう指導することができる。
(再生水等の利用)
第四十条 県、県民及び事業者は、再生水(ろ過、化学処理等を行うことにより再利用できるようにした水をいう。)、雨水、地下水及び湧水(以下「再生水等」という。)が貴重な水資源であることを認識した上で、再生水等の利用に努めるものとする。
2 県は、市町村と連携して、再生水等の利用が促進されるよう、県民及び事業者に対し、情報の提供、技術的な助言その他の必要な支援に努めるものとする。
(流水の活用)
第四十一条 県及び水利使用者は、地域に存するエネルギー源が地域の実情に応じて有効に活用されるよう、多様な流水を活用する取組の実施に努めるものとする。
(利水サポート団体)
第四十二条 知事は、国、県及び市町村と連携して、次に掲げる活動を行う法人その他これに準ずるものを、利水サポート団体として認定することができる。
一 国、県及び市町村が行う節水及び渇水対策への協力
二 節水及び渇水対策に必要な器具、資材又は設備の保管及び提供
三 節水、渇水対策及び再生水等の利用に関する情報又は資料の収集及び提供
四 節水、渇水対策及び再生水等の利用に関する調査研究
五 節水、渇水対策及び再生水等の利用に関する知識の普及啓発
2 前項の規定による認定を受けようとするものは、規則で定めるところにより、知事に申請しなければならない。
(渇水時の被害軽減対策)
第四十三条 県は、異常な渇水が発生したとき、又はその発生が予測されるときは、水利使用者の間で円滑に水利使用の調整が行われるよう、関係する河川管理者(河川法第七条(同法第百条第一項において準用する場合を含む。)に規定する河川管理者をいう。以下同じ。)と連携の上、必要な支援に努めるものとする。
2 県は、関係する市町村、水利使用者及び前条第一項の利水サポート団体と連携し、異常な渇水に対応できるよう、必要な情報を速やかに提供するものとする。
3 県は、異常な渇水が発生したときは、関係する市町村、水利使用者及び前条第一項の利水サポート団体の協力を得て、渇水による河川環境への影響及び県民への被害を最小化するために必要な施策の実施に努めるものとする。
4 水利使用者及び県民は、異常な渇水に備えるため、平常時から節水並びに代替水源及び備蓄水の確保に努めるものとする。
(事前渇水行動計画)
第四十四条 県は、異常な渇水による被害を最小限度にとどめるため、規則で定めるダムの貯水率に応じて県が講ずべき対策並びに水利使用者及び県民がとるべき行動を明らかにした計画(以下「事前渇水行動計画」という。)を策定するものとする。
2 県は、事前渇水行動計画を策定しようとするときは、あらかじめ、関係する河川管理者、市町村及び水利使用者との調整を図るものとする。
3 県は、事前渇水行動計画を策定したときは、その内容を県民に情報提供するものとする。
4 水利使用者及び県民は、事前渇水行動計画にのっとり、適切に行動するよう努めるものとする。
第四章 水循環及び環境
(涵養機能の維持及び向上)
第四十五条 県は、次に掲げるところにより、水の涵養機能の維持及び向上を図るものとする。
一 森林の有する水源の涵養の機能を持続的に発揮させるため、森林について現状を把握し、整備及び保全を推進するとともに、県民が組織する団体等による森林の整備及び保全に関する活動を支援すること。
二 農地の有する地下水の涵養の機能を効果的に発揮させるため、農地の整備及び保全に関する活動を支援すること。
三 県が管理する河川において、河川からの地下水の涵養の促進に資する整備を行うこと。
(水質の保全等)
第四十六条 県は、水質汚濁防止法(昭和四十五年法律第百三十八号)第二条第一項に規定する公共用水域及び地下水の水質(以下「公共用水域等の水質」という。)の保全及び改善に資するため、同法第十六条第一項に規定する測定計画に基づき、公共用水域等の水質の状態について継続的な監視を行うものとする。
2 県は、市町村と連携して、公共用水域等の水質に対する生活排水及び農業排水(農地から排出し、又は浸透する水をいう。)による汚濁の負荷の低減に資する施策の実施に努めるものとする。
(水循環の把握)
第四十七条 県は、健全な水循環に資する各種の施策を効果的に推進するため、河川の流況及び水利用の状況並びに県が定める観測地点における地下水の状況を定期的に調査することにより、水循環の状況の把握に努めるものとする。
2 県は、前項に規定する調査により把握した水循環の状況を公表し、県民との情報共有に努めるものとする。
(流域環境の保全等)
第四十八条 県は、その管理する河川及び河川管理施設等の整備及び維持管理に当たっては、健全な水循環の維持又は回復並びに流域全体を視野に入れた生態系の保全及び再生に努めるものとする。
(先導的な技術の研究開発)
第四十九条 県は、健全な水循環の維持又は回復に資する先導的な技術の研究開発を促進するため、その管理する河川及び河川管理施設等において、事業者及び大学その他の研究機関が実施する水循環に関する取組であって、地域における課題の解決に資するものに対する支援その他の必要な施策の実施に努めるものとする。
(水量の確保及び水辺の整備等)
第五十条 県は、市町村その他の関係者と連携して、県民等が河川と親しみ、及び共生するために欠かせない河川の水量の確保に努めるものとする。
2 県は、市町村その他の関係者と連携して、観光及びスポーツの振興等に資する水辺の整備並びに自然と共生する水辺の環境の創出に努めるものとする。
3 県は、前項に規定する水辺の整備及び水辺の環境の創出に当たっては、障がいの有無、年齢、性別等にかかわらず多様な人々が水辺を利用しやすい構造となるよう努めるものとする。
(県以外の管理者等への要請等)
第五十一条 知事は、良好な河川環境を保全し、及び形成するため必要があると認める場合は、県以外の河川及び河川管理施設等の管理者等に対して、基本理念にのっとり、前条の規定に準じた措置を講ずるよう要請し、又は協力を求めるものとする。
第五章 災害対応
(市町村への技術支援等)
第五十二条 県は、市町村長が的確に避難の指示等を行うことができるよう、洪水等又は津波による浸水被害の発生時か否かを問わず、市町村に対する情報の提供、技術的な助言、連携体制の構築その他の必要な支援を行うものとする。
2 県は、洪水等又は津波による大規模な浸水被害が発生し、市町村の浸水被害への対応能力が著しく低下した場合又はそのおそれがある場合には、当該市町村に対して、排水ポンプ車による排水その他の必要な支援を行うよう努めるものとする。
(令三条例四三・一部改正)
(水防体制の強化等)
第五十三条 県は、市町村その他の関係者と連携して、水防活動の拠点の整備及び水防資材の備蓄並びに水防活動の拠点及び水防資材の適切な維持管理に努めるものとする。
2 県は、市町村その他の関係者と連携して、水防団員等の水防技術の習得及び向上を図るために必要な支援を行い、水防団の強化に努めるものとする。
3 県は、国、市町村、水防団、流域住民その他の関係者と連携して、水防活動の拠点等を活用した水防訓練を実施し、水防体制の強化に努めるものとする。
4 県は、津波の発生時における水防活動その他の危険を伴う水防活動に従事する者の安全の確保が図られるよう平常時から備えるものとする。
(放置艇の解消)
第五十四条 県は、洪水等又は津波による浸水被害の発生時における被害の拡大を防止するため、放置艇(正当な権原に基づかず、継続的に係留等がされている船舶をいう。)を解消するための計画を策定し、その解消に努めるものとする。
(河川管理施設等の事前復旧計画等)
第五十五条 県は、その管理する排水施設その他の重要な河川管理施設等及びダムが被災した場合には、速やかにその機能の復旧又は代替する機能の確保ができるよう、これらの施設の事前復旧計画の策定その他の必要な措置を講ずるものとする。
2 県は、その管理する河川について、著しい流木等の漂着により、その流下能力が阻害された場合には、速やかに流下能力を回復させることができるよう、流木等の除去計画の策定その他の必要な措置を講ずるものとする。
(震災時等の水資源を確保するための対策の強化)
第五十六条 第三十九条に規定する流路を形成する工作物の管理者は、当該工作物の強化に努めるとともに、当該工作物が被災した場合に備え、早期復旧を可能とする資機材の備蓄、相互応援体制の構築並びに代替水源及び備蓄水の確保に努めるものとする。
2 県は、震災等により、長期間にわたって用水の取水及び送水の機能が失われないよう、第三十九条に規定する流路を形成する工作物の管理者に対し、事前防災及び減災に係る対策について技術的な助言その他の必要な支援を行うものとする。
(震災時等の水の融通の円滑化)
第五十七条 県は、震災等により用水の取水又は送水の機能に支障が生じたときは、水利使用者の間で円滑に水利使用の調整が行われるよう、関係する河川管理者と連携の上、必要な支援に努めるものとする。
(震災時等の河川等の活用)
第五十八条 県は、震災等の発生時において、その管理する河川管理施設を避難場所及び救援物資等の置場等に活用できるよう、必要な措置を講ずるものとする。
2 県は、震災等の発生時において、避難並びに救援に必要な資材及び人員の輸送に利用する経路を確保するため、その管理する河川及び河川管理施設を避難路及び緊急輸送路として活用できるよう、必要な措置を講ずるものとする。
第六章 水教育
(地域における課題を踏まえた水教育の推進)
第五十九条 県は、市町村その他の関係者と連携し、次に掲げる事項を基本として、地域における課題を踏まえた水教育の推進に努めるものとする。
一 治水及び利水の歴史並びに水に関わる文化に対する県民の理解と関心を深め、水に関わる労苦の歴史及び文化を次代に継承すること。
二 健全な水循環の重要性に対する県民の理解と関心を深め、健全な水循環の維持又は回復に資すること。
三 河川環境及び流域の自然環境に対する県民の理解と関心を深め、その保全及び再生に資すること。
四 平常時から水災害に備え、水災害の発生時には適切に対処することができるよう、水災害及び水災害対策に関する知識を普及すること。
(学校における水教育)
第六十条 県は、次代の社会を担う子供が、水に親しむとともに、治水及び利水の歴史、水に関わる文化、健全な水循環の重要性等についての理解と関心を深め、さらに、水に関わる労苦の歴史及び文化を未来に引き継げるよう、学校における水教育の推進に努めるものとする。
(水教育を推進する環境の整備)
第六十一条 県は、県民が容易に水教育を受けることができるよう、水教育に関する教材を作成し、その効果的な提供に努めるものとする。
2 県は、水に関わる歴史及び文化の遺産並びに河川の整備事例等を整理し、水教育の推進に活用するよう努めるものとする。
(水に関する行事等を通じた水教育)
第六十二条 県は、第八条第三項に規定する行事、水循環基本法第十条第三項に規定する事業その他水に関する催し(以下「水に関する行事等」という。)を積極的に実施し、又は活用することにより、水教育の推進に努めるものとする。
(流域における交流の促進)
第六十三条 県は、治水及び利水の機能その他のダム及び森林の恩恵について、県民が理解を深めることができるよう、上流の水源地域の住民と下流の地域の住民との交流をはじめとする流域内の住民の交流の機会の確保に努めるものとする。
(水教育の展開)
第六十四条 県は、県民との連携及び協働の下に、県の全域において水教育が展開されるよう努めるものとする。
2 県は、水教育及び水に関する行事等を実施するに当たっては、全ての県民が参加しやすい環境の整備に努めるものとする。
第七章 罰則
第六十五条 次の各号のいずれかに該当する者は、二十万円以下の罰金に処する。
四 第二十七条(建築基準法第八十七条第二項の規定により準用される場合を含む。)の規定による知事の命令に違反した者
附則
(施行期日)
1 この条例は、平成二十九年四月一日から施行する。
(建築基準法施行条例の一部改正)
2 建築基準法施行条例(昭和四十七年徳島県条例第三十二号)の一部を次のように改正する。
〔次のよう〕略
附則(平成二九年条例第四四号)
この条例は、公布の日から施行する。
附則(令和三年条例第四三号)
この条例は、公布の日から施行する。