○徳島県交通安全の推進に関する条例

令和二年三月十七日

徳島県条例第三十四号

徳島県交通安全の推進に関する条例をここに公布する。

徳島県交通安全の推進に関する条例

目次

前文

第一章 総則(第一条―第八条)

第二章 交通安全県民運動の推進(第九条―第十三条)

第三章 交通安全の確保(第十四条―第十八条)

第四章 危険な運転行為の根絶等(第十九条―第二十一条)

第五章 財政上の措置(第二十二条)

附則

本県において、自動車等の車両は日常生活や経済活動に欠かすことのできない交通手段の一つであり、これによって私たちは多くの恩恵を受けている。

しかし、その一方で、交通事故は尊い県民の命を奪い、残された人々に大きな悲しみを与えるとともに、交通事故に関係する人々の生活の維持を困難にし、社会的、経済的活動に対しても大きな損失を及ぼしている。

近年、高齢者によるブレーキとアクセルの踏み間違い等の運転操作の誤り、運転中の携帯電話の操作、あおり運転等の危険な行為による交通事故が発生しており、県民が様々な要因による交通事故の危険にさらされるおそれが高まっている。

痛ましい交通事故をなくし、真に安全で安心な徳島県を実現するためには、今、改めて、交通安全に対する県民の意識を高め、全ての県民一人一人が真剣に交通安全と向き合い、交通事故を起こさせない社会風土や環境づくりに努めることが重要である。

とりわけ運転者は、交通事故によって尊い命が奪われることがあってはならないことを肝に銘じ、交通道徳に対する意識を高く持って、周囲に配慮した安全運転に取り組まなければならない。

ここに、人命尊重の理念に基づき、県民が安全で安心できる交通環境の確立を目指し、交通事故のない社会を実現するため、この条例を制定する。

第一章 総則

(目的)

第一条 この条例は、交通安全に関し、基本理念を定め、県及び運転者等の責務並びに県民、歩行者及び事業者の役割を明らかにするとともに、交通安全に関する必要な事項を定めることにより、交通安全対策の総合的かつ計画的な推進を図り、交通安全意識の高揚及び交通道徳の向上を期し、もって交通事故のない安全で安心な社会の実現に寄与することを目的とする。

(定義)

第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

 交通安全 道路交通の安全をいう。

 車両 道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)第二条第一項第八号に規定する車両をいう。

 自動車等 道路交通法第二条第一項第九号に規定する自動車及び同項第十号に規定する原動機付自転車をいう。

 自転車 道路交通法第二条第一項第十一号の二に規定する自転車をいう。

 運転者 自動車等を運転する者をいう。

 事業者 事業を行う法人その他の団体又は事業を行う場合における個人をいう。

 関係団体 交通安全に関する活動を行うことを主な目的として組織された団体をいう。

(基本理念)

第三条 交通安全は、人命尊重の理念に基づき、交通事故のない社会の実現を目指すことにより確保されなければならない。

2 交通安全は、県民及び事業者の交通事故のない社会の実現を目指した自主的な取組が促進されることにより確保されなければならない。

3 交通安全は、県、市町村その他の関係行政機関並びに県民及び関係団体が、相互に連携を図りながら、協力して、一体となって取り組むことにより確保されなければならない。

(県の責務)

第四条 県は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、国、市町村、県民、事業者及び関係団体との相互の連携及び協力の下、交通安全に関する総合的な施策を実施する責務を有する。

2 県は、市町村、県民、事業者及び関係団体が実施する交通安全に関する取組を促進するため、情報の提供、助言その他の必要な支援を行うものとする。

(運転者等の責務)

第五条 運転者は、基本理念にのっとり、交通安全に関する法令(以下「交通安全関係法令」という。)を遵守するとともに、歩行者及び他の車両に危害を及ぼさないようにするなど自動車等を安全に運転しなければならない。

2 自転車を利用する者は、当該利用については、基本理念にのっとり、交通安全関係法令を遵守するとともに、徳島県自転車の安全で適正な利用に関する条例(平成二十八年徳島県条例第三号)の定めるところによるものとする。

(県民の役割)

第六条 県民は、基本理念にのっとり、交通安全に関する理解を深め、交通安全関係法令を遵守するとともに、県、市町村その他の関係行政機関が実施する交通安全に関する施策及び活動に自主的かつ積極的に協力するよう努めるものとする。

(歩行者の役割)

第七条 歩行者は、基本理念にのっとり、道路を通行するに当たっては、交通安全関係法令を遵守するとともに、歩きスマホ(指で画面上をなぞること等により携帯電話又はこれに類する機器を操作しながら歩行することをいう。)その他の車両への注意力が散漫となる行為を慎むなど、道路交通に危険が生じないように努めなければならない。

(事業者の役割)

第八条 事業者は、基本理念にのっとり、その事業の用に供する車両の安全な運行を確保するよう努めなければならない。

第二章 交通安全県民運動の推進

(県民運動の推進に向けた環境づくり)

第九条 県は、交通安全に関する取組が県民運動として展開されるよう、国、市町村及び関係団体と連携しながら、その環境づくりを推進するために、必要な措置を講ずるものとする。

(県民の自主的な活動の促進)

第十条 県は、交通安全に関する地域住民、事業者等による自主的な活動が、各地で活発に展開されるよう、情報の提供、助言その他の必要な支援を行うものとする。

(市町村等への支援)

第十一条 県は、交通安全に関する市町村の施策及び関係団体の取組が円滑に実施されるよう、情報の提供、助言その他の必要な支援を行うものとする。

(広報及び啓発)

第十二条 県は、交通安全に関する県民の関心及び理解を深めるとともに、積極的な行動が促進されるよう、情報の提供、助言その他の必要な支援を行うものとする。

(交通安全推進期間)

第十三条 県は、交通安全について県民の関心と理解を深めるため、交通安全を推進するための取組を集中的に実施する期間を設け、交通安全に関する啓発及び広報並びに県民運動の推進に向けた取組を行うものとする。

第三章 交通安全の確保

(高齢者等の交通安全の確保)

第十四条 県は、交通安全の施策の実施に当たっては、高齢者、障がい者、子ども等の交通安全の確保が図られるよう特別の配慮をするものとする。

2 運転者は、高齢者、障がい者、子ども等の交通安全の確保に努めなければならない。

(道路の交通環境の整備)

第十五条 県は、道路の交通環境の整備を図るため、交通安全施設の整備、交通管制の合理化その他の必要な措置を講ずるものとする。

2 県は、前項の措置を講ずるに当たっては、高齢者、障がい者、子ども等の安全の確保が図られるよう配慮するものとする。

3 県は、国、市町村及び道路の交通環境の整備を行う機関と連携して、交通事故が多発する箇所において現地の状況を確認し、必要があると認められるときは、各道路の管理者等に対し、必要な措置を講ずるよう要請するものとする。

(公共交通の利用促進)

第十六条 県は、交通事故の抑制と県民の移動手段の確保を図るため、市町村及び事業者と連携して、県民の公共交通の利用促進に向けた取組を行うものとする。

(交通安全教育の推進)

第十七条 県は、高齢者、障がい者及び外国人をはじめ、全ての県民の交通安全に関する知識の普及及び意識の高揚を図るため、市町村、事業者、関係団体等と連携しながら交通安全教育の推進に必要な措置を講ずるものとする。

2 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する学校、同法第百二十四条に規定する専修学校、同法第百三十四条第一項に規定する各種学校、児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第三十九条第一項に規定する保育所、同法第四十一条に規定する児童養護施設、就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成十八年法律第七十七号)第二条第六項に規定する認定こども園その他これらに類する施設の長は、その児童、生徒又は学生に対し、交通安全教育を実施するよう努めるものとする。

3 高齢者、障がい者等の同居者等は、高齢者、障がい者等の交通安全の確保に必要な助言をするよう努めるものとする。

4 事業者は、その従業員に対して交通安全教育を実施するよう努めるものとする。

(調査研究)

第十八条 県は、交通安全に関する施策の策定及び実施に必要な調査研究を推進するものとする。

第四章 危険な運転行為の根絶等

(危険な運転行為等の防止)

第十九条 運転者は、交通安全関係法令を遵守し、常に安全運転の徹底を心掛け、無免許運転、酒気帯び運転、速度違反、携帯電話又はそれに類する機器を操作しながら行う運転、あおり運転(幅寄せ、進路妨害等重大な交通事故につながるおそれがある悪質かつ危険な運転行為をいう。)等の危険な運転行為が交通事故を引き起こす原因となることを認識するとともに、歩行者及び他の車両の安全に配慮しなければならない。

2 県は、危険な運転行為の防止に関する広報、啓発その他必要な措置を講ずるものとする。

3 事業者は、その従業員に対し飲酒、過労、病気等の理由により正常に運転することができないおそれの有無を確認する等危険な運転の防止に必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(運転者の適切な対応)

第二十条 運転者は、自らの身体の機能の状態、健康の状況等を自覚し、自らの体調、運転操作等に不安を覚えるときは、運転を自粛するなど適切に対応しなければならない。

(交通事故被害者等に対する支援)

第二十一条 県は、交通事故による被害者及びその家族に対する支援の充実を図るため、相談窓口及び救済制度に関する情報の提供その他必要な措置を講ずるものとする。

第五章 財政上の措置

第二十二条 県は、交通安全に関する総合的な施策を実施するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

この条例は、公布の日から施行する。

徳島県交通安全の推進に関する条例

令和2年3月17日 条例第34号

(令和2年3月17日施行)